叫 プレミアム・エディションの画像
マイベスト映画「アカルミライ」の黒沢清監督の映画「叫」
前作「LOFT」に続く作品。
またしてもジャンルとしてはホラー。レンタル店にも
ホラーコーナーにありました。ですが、黒沢清監督なので
特にジャンルに捉われないのは今回も変わっていません。
お馴染みのホラー映画で恐怖を味わいたいという人は
「叫」はとてもつまらなく思う事かと思います。
主人公の刑事吉岡は海水を飲んで死んだ女性の死体の
捜査をしていたが、ふとしたことから女性殺害の疑いを
同じ警察からかけられてしまう。そして、連続して起こる
死因が海水を飲んだ溺死という殺人事件が起きる。
そんな折、吉岡に赤い服をまとった女性の幽霊が現れる。
混乱する場面もあったが、吉岡はあの海水を飲んだ女性の
死体に関して全く身に覚えがなかった事を思い起こし、
その赤い服の幽霊に「人間違いしてませんか?」と尋ねる。
幽霊も人間違いする!?(笑)普通に見てても笑える
シーンが沢山あります。
それはそうと海水は一つのメタファーである。
埋立地に住む吉岡らにとって、埋立地はどこかやましい感じも
荒廃した感じもするやるせない場所である。
地上でも海でもない『ここではないどこか』へ通ずる不思議な
空間である。先日豊洲からフェリーに乗りお台場まで向かったが、
そこから見えるのは埋立地の裏の世界。荒廃した工場が無造作に
見えた。そこには忘れ去られた近代化の古傷、いや、今も残る
生々しい傷が見えた気がした。目をつむる事もできるが、
そうすると赤い服の女性の幽霊が現れる!?(笑)
そういう見方もできなくない映画だったが、単なる忘れ去って
しまった人に対する罰?にしては幽霊が怖いというより
コミカルで笑えてしまう。そこには幽霊がどうこう言おうと
忘れ去るのは時間の問題であり、幽霊の努力は報われない。
とともに狭苦しい「ここ」でしか生きれない人々にとって、
「ここではないどこか」を夢想する空間が益々失われ
さらに閉塞間に苦しむ。そんな事を感じました。
ストーリー性よりも美しい情景、脈絡をあまり感じられない
カット割、それでいて、脈絡があるように感じる瞬間もある
映画で、自分個人的にはかなりツボです。
この映画が一つの「ここではないどこか」
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